リハ職の訪問が看護を超えると8単位減算 ―― OTが読む「人員配置」という経営判断

訪問看護でリハ職の訪問回数が看護を上回ると1回8単位が減算されることを示すアイキャッチ画像

「前年度の訪問回数の実績で、翌年度まるごとの単価が決まる」。訪問看護の現場に立つリハ職なら、この一文の重さが伝わるはずだ。自分の訪問1件が、翌年度の事業所の単価にまで響く。2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で、訪問看護ステーションから理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、まとめてリハ職)が行う訪問について、1回につき8単位を減算する規定が新設された。しかもその判定は、今月の動きではなく前年度1年間の実績で決まる。単月で取り返せる話ではない。

だから、この改定に対して現場が取るべき構えは1つに絞れる。減算を避けることそのものではなく、看護とリハの組み合わせを設計することだ。減算のトリガーの中心は「前年度のリハ職の訪問回数が、看護職員の訪問回数を超えていること」――訪問看護というサービスの中で看護とリハをどう組み合わせるか、その設計を報酬の構造として問う制度である。リハ職本人にとっては、自分の訪問1件が事業所全体の収支バランスのどちら側に効いているのか、という問いに読み替えられる。

本記事は、作業療法士(OT)として訪問の現場に立つ立場から、この減算を「回避テクニック」ではなく「配置と訪問計画をどう再設計するか」という経営判断の枠組みとして読み解く。土台は2024年度改定で新設された規定だ。2026年時点でさらに見直しが入っているかは各自で最新の告示を確認してほしい。ここでは新設時点の制度を前提に論じる。

目次

制度の事実 ―― 何が、いつから、いくら減るのか

まず、感情を挟まずに骨格だけを確認する。ここを共有しないと、その先の設計の話がぶれる。

新設された8単位減算の骨格

対象は、訪問看護ステーションに所属するリハ職(PT・OT・ST)が行う訪問である。この訪問1回につき、所定単位数から8単位が減算される。訪問看護には看護職員による訪問とリハ職による訪問の両方があるが、減算がかかるのはリハ職の訪問に対してだ。看護職員の訪問には直接かからない。

適用時期 ―― 前年度実績で翌年度が決まる構造

適用の時間軸が、この制度のいちばん厄介なところだ。2024年度に減算する場合は、2023年度(前年度)の訪問回数の実績に応じて、2024年6月1日から2025年3月31日までの間で減算される。2025年度以降は、前年度の実績に応じて翌年度の4月から減算がかかる。

つまり「前年度1年間の実績で、翌年度まるごとの単価が変わる」。悪い月が続いたからといって、その月のうちに手を打って取り返せる仕組みではない。判定に使う期間が1年、その結果が反映される期間が次の1年。この時間差が、後で述べる「年度設計」の話に直結する。

介護予防(要支援者)への上乗せ

さらに、介護予防訪問看護でリハ職が12か月を超えて訪問を継続する場合には、上乗せの減算がある。すでに8単位減算の対象になっている事業所は、これに加えて1回15単位が減算される。8単位減算に該当しない場合でも、従来どおり1回5単位の減算がかかる。

要支援者への長期にわたるリハ主体の訪問が、最も重く見られる設計になっている。軽度者に平日日中のリハを中心に組み立てている事業所ほど、影響が大きい。

減算の「2つの入口」を分けて読む

ここが本記事の核心である。8単位減算は、単純化した解説では「リハの回数が看護を超えると減る」とだけ語られがちだ。だが実際のトリガーは2系統あり、片方だけを潰しても減算は消えない。ここを分けて読めるかどうかで、打ち手の精度が変わる。

入口① 回数トリガー

1つ目は、前年4月から当年3月までの期間で、リハ職の訪問回数が看護職員の訪問回数を上回っている場合。これがいちばん語られる条件だ。リハ職の訪問が看護職員の訪問より多い運営そのものが、減算の入口になる。

入口② 加算トリガー

2つ目は見落とされやすい。仮に看護職員の訪問回数がリハ職の訪問回数以上であっても、算定月の前6か月間に一定の加算をいずれも算定していない場合には、やはり減算の対象になる。ここで問われるのは、看護の機能を示す加算――緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算という三系統である。これらをいずれも算定していない、つまり「看護らしい機能」を示す加算を1つも取っていない事業所は、回数の比率にかかわらず減算がかかる。

なお、この三系統の加算がそれぞれどの区分まで含むか(とくに看護体制強化加算の区分)は、解説によって表記が揺れている。区分の細部は厚生労働省の告示・留意事項で確認してほしい。本記事では条番号や区分の断定は避け、「三系統の加算」という枠組みで論じる。

だから「加算を1つ取れば安心」は誤り

2つの入口を並べると、よくある誤解が見えてくる。「加算を1つ取れば減算を避けられる」という理解だ。これは不正確である。加算トリガー(入口②)を外しても、回数トリガー(入口①)は別に残る。逆に回数だけ整えても、三系統の加算を1つも取っていなければ入口②で引っかかる。

減算を確実に避けるには、①看護職員の訪問回数がリハ職以上であること、②三系統の加算のいずれかを算定していること――この両方を満たす必要がある。数合わせを1か所だけやっても、もう片方の入口が開いたままなら意味がない。この「両方」という構造こそ、この制度を設計問題として扱うべき理由である。

判定に使う「訪問回数」の数え方

もう1点、実務で取り違えやすいのが「訪問回数」の数え方だ。ここでいう回数は、レセプト上の算定回数とは別の概念である。

リハ職が同じ日に連続して2回訪問した場合、それは1回として数える。たとえば、ある日の午前に1回、午後に連続して2回訪問したとする。算定回数としては3回だが、判定に使う訪問回数は2回だ。看護とリハの回数を比べるときは、この判定用の数え方で揃える必要がある。自事業所の比率を数えるつもりが、算定回数のまま数えて実態とずれる、というのはありがちな落とし穴だ。

これは単月ではなく「年度設計」の問題である

制度の事実と2つの入口を押さえたうえで、時間軸をもう一度強調したい。この減算は、月次で最適化する話ではない。

前年度の実績が翌年度を丸ごと決める

前年4月から当年3月までの1年間の実績が、翌年度4月からの単価を決める。判定期間と反映期間がそれぞれ1年ある。だから、今月あわてて看護の訪問を増やしても、それが効いてくるのは早くて翌年度だ。逆に言えば、来年度の単価は、今まさに積み上げている今年度の実績で、もう決まりつつある。

この時間差は、打ち手の性質を変える。問うべきは「今月どう帳尻を合わせるか」ではなく、「採用・受け入れ方針・訪問比率を、どの年度でどう作っていくか」だ。看護職員を増やすにも、リハと看護の訪問比率を組み替えるにも、年度をまたいだ計画が要る。減算は経理の問題である前に、人員計画の問題として現れる。

数える単位も設計の前提になる ―― 一体運営は合算

年度という時間軸に加えて、もう1つ設計の前提になるのが「どの範囲を1つの数字として数えるか」だ。指定訪問看護と指定介護予防訪問看護を一体的に運営している場合、訪問回数は合算して数える。介護と予防を分けて「予防のほうはリハが多くても大丈夫」と考えるわけにはいかない。判定はステーション全体で1つの数字として行われる。だから配置の設計も、年度をまたぎつつ、事業所全体の合計で組み立てる必要がある。

数合わせを超えて ―― OTの視点で配置とリハの価値を組み直す

ここまでは制度の読み方だった。最後に、では現場のOTと事業所はどう考えるか、を論じたい。

国の趣旨を、論考として置く

この改定の背景には、国の明確な整理がある。訪問看護ステーションには、医療ニーズの高い重度者に対して24時間・365日の訪問を行い、地域包括ケアの要となる役割が求められている。その一方で、一部の事業所ではスタッフの多くをリハ職が占め、軽度者に平日日中を中心とした訪問リハを行う運営が広がっていた。国はこれを本来の役割と逆行すると見て、今回の減算で是正を図った。

さらに国は、今後も状況を見ながらこうした方向の見直しが続く可能性を示している。つまりこの改定は一過性の調整ではなく、方向性として読むべきものだ。ここで大切なのは、これを断罪も礼賛もしないことだ。制度批判に走っても、追従して萎縮しても、現場の判断は前に進まない。事実として方向性を受け止めたうえで、では自分たちはどう応えるかを考える。それが論考の役割だ。

リハ職本人の不安を、正面から置く

この改定を、リハ職本人はどう受け取るだろうか。「自分の仕事は減らされる側なのか」「訪問看護でのリハの居場所はどうなるのか」。そう感じるのは自然だ。回数を比較され、加算の有無で線を引かれ、要支援者への長期リハが狙い撃ちされる。制度の文面だけを追えば、リハの価値そのものを否定されたように読める。

だが、そこで身構えて訪問を減らすことに専念しても、自分の専門性は守れない。数の上で退いても、リハがどこで役に立つのかを語れなければ、居場所は結局狭くなる。不安を出発点にするなら、向かう先は「減らされないための立ち回り」ではなく「選ばれるための価値の言語化」だ。ここから、OTの視点での再定義に入る。

安直な回避策の限界

減算を避けるだけなら、方法は単純に見える。看護の訪問を増やす、リハの訪問を減らす。だがこれを「数合わせ」としてだけやると、問題を先送りするだけになりやすい。

リハの訪問を機械的に削れば、これまでリハで支えてきた利用者のケアが薄くなる。看護を増やすには看護職員の採用が要る。どちらも、利用者ケアと売上のトレードオフを動かす意思決定だ。数字を1つ整えることと、事業として何を提供し続けるかを決めることは、別の話である。回避策を打つときほど、その打ち手が利用者ケアのどこを削り、どこを厚くするのかを見ておきたい。

OTの立場からの再定義

ここでOTの視点が効く。減算は「リハは不要」という宣告ではない。看護が主であるという整理の中で、リハがどこで価値を出すのかを選び直せ、という要求だと読める。

訪問看護の枠組みでリハが最も価値を出すのは、たとえば重度者の生活動作の維持、退院直後の生活の立て直し、生活期における目標設定と環境調整のように、看護と協働してこそ効く場面だ。軽度者への平日日中の一律なリハで訪問回数を積むのではなく、看護と組んだときにリハの専門性が最大化する場面へ、限られた訪問枠を寄せていく。これは減算を避けるための後ろ向きな話ではなく、リハがどこで役に立つかを問い直す前向きな設計である。

現場のOTが持てる問い

最後は、管理者だけの話ではない。訪問に入るOT自身が持てる問いがある。「自分のこの訪問1件は、事業所の看護対リハの比率の、どちら側に効いているか」。この問いを一人ひとりのリハ職が持てる現場は、数合わせに追われる側から、制度を織り込んで設計する側に回れる。訪問を回数の数字としてだけでなく、事業所の設計の一部として見る。その入口が、この問いである。

減算は「リハを消す制度」ではなく「組み合わせを設計せよ」という要求

8単位減算は、リハを訪問看護から締め出す制度ではない。前年度実績という時間軸の中で、看護とリハの組み合わせを設計せよ、という要求である。避けるべきは減算そのものというより、看護とリハの比率を無設計のまま放置することだ。

立場を問わず、具体的な一歩として勧めたいのは、まず自事業所の数字を1枚にそろえてみることだ。次の3つを、判定用の数え方(連続2回は1回)で見る。

  • 前年度(前年4月〜当年3月)の、リハ職と看護職員それぞれの訪問回数。どちらが多いか(入口①の位置)。
  • 直近6か月で、三系統の加算のいずれかを算定しているか(入口②の位置)。
  • 訪問看護と介護予防を一体運営しているなら、両者を合算した数字で見る。

この3つを並べれば、自分の事業所が2つの入口のどちらに、どれだけ近いかが見える。数えることは、身構えることでも、あきらめることでもない。看護とリハの配置を設計し始めるための、最初の材料をそろえる作業だ。そのうえで、加算の区分や算定要件、条文の細部は、必ず厚生労働省の告示・留意事項・疑義解釈で確認し、個別の算定判断は一次資料と、必要なら所管の窓口・専門家への確認に基づいて行ってほしい。

現場の制度と経営は、改定のたびに立ち止まって数えて考え直す対象になる。本ブログでは、訪問看護をはじめとする現場の話を、現場スタッフの視点から論じている。同じように考える材料が要るときは、継続して読んでもらえるとうれしい。日々の短い気づきはX(@yama_k03)でも書いている。


Sources

※本記事の数値・制度は上記を含む二次解説をもとに整理した。加算の区分・条文番号・最新の改定状況は、厚生労働省(老健局)の告示・留意事項・疑義解釈で最終確認すること。

舞台裏を、そのまま。

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